隣地天空率を算定する位置
「平成14年建築基準法改正の解説(国土交通省住宅局市街地建築課編集):工学図書」(以下、解説書)によると、
・・・建築物の敷地が制限勾配の異なる地域等にわたる場合には、制限勾配の異なる地域等ごとの部分に分け、当該部分について各々天空率の算定位置を配置すること・・・
、と記されています。
この解説書は、「平成14年12月27日国住街発第110号 建築基準法等の一部を改正する法律の一部の試行について」 を基に編纂されており、当該「技術的助言」は旧通達と同等の効力を有する文書として広く認知されています。
解説書の P.80 にある挿絵(下図)は隣地高さ制限について天空率を算定する位置を説明するものとして、道路高さ制限や北側高さ制限などの天空率算定位置を決定する際に準用されてきました。
しかし、この図(下)がくせ者なのです。

図示されることにより、運用のイメージが直感的に頭の中に焼き付きますね。
しかし、よくよく考えてみると矛盾があることがわかります。
図示されている敷地が凹部のないことに着目し、あえて凹部のある敷地を用意してみます。
条件は前図と同様で、算定する隣地境界線が折れ曲がっていますが特に珍しいことではありませんね。
また、下左図と下右図との違いは用途地域の区分線の位置のみです。

では、ここで解説書の挿絵に従い、算定位置を配置してみましょう。

解説書の挿絵には制限勾配の異なる地域等ごとの最外郭を「高さ制限が適用される部分に面する両端」としているようです。
また、法第56条第7項第2号の「隣地境界線」は個々の隣地境界線を表している、とのこと。
各々の隣地天空率を算定するための(隣地)基準線は、隣地境界線の長さを超えることはありません。
よって、上右図の天空率を算定する位置はなくなってしまう?ことになりますね。
建築確認という、一定の基準に照らして確認を行う際に、高さ制限を天空率で緩和する際のチェック漏れはあり得ないと考えられます。
算定位置が存在しない = 比較できない = 審査するまでもなくクリア、、、なのでしょうか?
※当然のことですが、上図赤部に隣地高さ制限は適用されます、、、。
建築基準法にはどのように記載されているのか、確認してみましょう。
隣地天空率を算定する位置について追ってみます。
法第56条第7項第2号に次のような記載があります。
| 二 第1項第2号、第5項及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。) | 隣地境界線からの水平距離が、第1項第二号イ又はニに定める数値が1.25とされている建築物にあつては16m、第1項第二号イ又はニに定める数値が2.5とされている建築物にあつては12.4mだけ外側の線上の政令で定める位置 |
同号中、
「隣地境界線」とは、
「水平距離」とは、高低差を考慮せずに平坦に計測した距離(垂直や平行のことではありません。)
「政令」とは、令第135条の10
噛み砕くと隣地天空率を算定する位置は、
『 (
となります。
では、令第135条の10を確認してみます。
| (法第56条第7項第2号の政令で定める位置)
第135条の10 法第56条第7項第2号の政令で定める位置は、当該建築物の敷地の地盤面の高さにある次に掲げる位置とする。
2 当該建築物の敷地が隣地制限勾配が異なる地域等にわたる場合における前項の規定の適用については、同項第1号中「限る。)」とあるのは、「限る。)の隣地制限勾配が異なる地域等ごとの部分」とする。 |
同号中、
「面する」とは、向く、向かうの意味。(デイリーコンサイス国語辞書:三省堂)
噛み砕くと、
『 法第56条第7項第2号の位置(外側の線)は、建築物の敷地の地盤面の高さにあって、かつ、建築物の敷地に向く部分の両端上(高さ制限が適用されている部分に限る。)』
となります。
また、道路天空率の算定位置とは異なり、第135条の10中には「・・・最も近い・・・」との記述がないことにも留意すべきです。
| (法第56条第7項第1号の政令で定める位置)
第135条の10 法第56条第7項第1号の政令で定める位置は、前面道路の路面の中心の高さにある次に掲げる位置とする。
2 当該建築物の敷地が道路制限勾配が異なる地域等にわたる場合における前項の規定の適用については、同項第1号中「限る。)」とあるのは、「限る。)の道路制限勾配が異なる地域等ごと」とする。 |
隣地天空率の算定位置は、『最も近い』位置でなくてもいいんですね。
【まとめ】
頭書の問題は、外側の線の長さがなくなることによるチェック漏れでした。
しかし、制限勾配の異なる地域、地区、区域
記されているのは、「・・・隣地高さ制限が適用される地域、地区又は区域内の部分に限る。)・・・」です。
制限勾配が異なっていても隣地高さ制限は適用されているので、隣地境界線から16m又は12.4mだけ外側の線上であれば良いことになり、基準線の長さは常に隣地境界線と同様で良い、と考えられます。
常に基準線が一定の長さを保つことができれば、頭書の「算定線がなくなる」ような矛盾は起き得ません。
よって、各高さ制限の天空率算定位置は、ある一定の位置を保ち、その位置が動くことはない、とする必要があります。
- 下図中、算定線Aは第二種中高層地域(黄部)の天空率算定位置、算定線Bは商業地域(赤部)の天空率算定位置を表しています。
- 下図区分内にさらに高低差区分が為されている場合なども同様に、算定位置(基準線)は隣地境界線の長さで存在しなければなりません。
- よって、算定位置(基準線)制限勾配の異なる数+高低差区分区域の数だけ存在しなければならないことなります。(長さは算定線A=算定線Bで一定)

∴Q.E.D.
/html/santeiiti/index.html - 更新日時:09/07/07 00:00


