北側道路の天空率を算定する位置についての考察
敷地の北側に面する道路がある場合、天空率による北側高さ制限の緩和を適用できるかどうか、を考えてみたいと思います。
北側高さ制限を天空率で緩和することに問題があるとは思えません。実際に北側に道路がある場合の北側高さ制限によって建築物の高さを制限することが可能であり、制限を適用しないことを目的に追加された法律が法第５６条第７項第３号だからです。
では、どこに問題があるのでしょうか。
北側高さ制限適合建築物については、従前の北側高さ制限の取り扱いを基とすることで問題はないと思われます。
問題があるとすれば、北側天空率を算定する位置です。
「天空率を算定する位置が、法第５６条第７項第３号において、『隣地境界線から真北方向へ・・・』と記されている。」ことに起因した、「前面道路の境界線は隣地境界線ではない。」とする考えに基づくものと思われます。
北側高さ制限は、「北側の隣地」への影響を考慮した高さ制限です。ここで言う「北側の隣地」とは、隣接地だけでなく、『北側に前面道路がある場合においては、当該前面道路の反対側の隣接地をいう。』（令第１３５条の４第２項）、と記されていることからも判るように、「北側前面道路の反対側の境界線」が「北側隣地境界線」であることは周知のことと考えられます。
現に、北側高さ制限では、前面道路の反対側の境界線からの高さ制限を、隣地境界線からの高さ制限と同様に取り扱っているからです。
また、この令第１３５条の４は、法第５６条第１項第３号の政令であり、同条を参照する法第５６条第７項第３号にも有効な考えであると思われます。
では、「技術的助言（旧通達）」ではどのように記されているのでしょうか。
建築基準法等の一部を改正する法律の一部の施行について（平成１４年１２月２７日国住街第１１０号） 第３ 道路高さ制限、隣地高さ制限及び北側高さ制限と同程度以上の採光・通風等を確保する建築物に係る同制限の適用除外制度の導入（法第56条第７項関係）第３項には、次のような見出しが付いています。
３ 北側道路高さ制限を適用しない建築物の基準等
北側道路高さ制限は天空率によって緩和できる旨を見出しにも記していますので、緩和できる、とする考えに立って記述します。
以下、緩和基準が同項各号に示されています。
北側道路高さ制限を天空率によって緩和するための算定位置については、同項（２） 天空率の算定位置（法第56条第７項第３号、令第135条の11関係）の前段部分において、
（２）
天空率の算定位置（法第56条第７項第３号、令第135条の11関係）
天空率の算定位置は、計画建築物の敷地の地盤面の高さにある、第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の建築物にあっては敷地境界線から真北方向へ４ｍだけ外側の線、第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域内の建築物にあっては敷地境界線から真北方向へ８ｍだけ外側の線の、計画建築物の敷地の真北に面する部分の両端上の位置であり、・・・
と記されており、敷地境界線から真北方向への離れた位置を「算定位置」と規定しています。単に敷地境界線であるため、全ての敷地境界線が対象となり何ら問題はありません。
問題は後段部分で、
隣地境界線と法第５６条第７項第３号に規定する外側の線（以下「北側基準線」という。）の真北方向への水平距離が４ｍ若しくは８ｍの場合においては、当該位置の間の北側基準線上に、それぞれ１ｍ以内又は２ｍ以内の間隔で均等に配置した位置であることとした。
と記されています。
ここで言う『隣地境界線』は法５６条第１項第３号の適用時に既に「北側の隣地」（前面道路の反対側の隣接地）を含んでおり、このことは緩和ではなく同号に規定済みであることから、改めて言及する必要はないと思われますが、同号中『・・・当該部分から前面道路の反対側の境界線又は隣地境界線までの真北方向の水平距離・・・』、と同じ重みで並列に記されていることからも、「前面道路の反対側の境界線」＝「隣地境界線」であることは明白です。
さらに、算定位置の配置方法についての留意点についても、
�� 令第135条の４第１項第１号の規定が適用される場合の天空率の算定位置は、北側基準線上に配置することとされており、同号の規定によりみなされる隣地境界線の真北方向への水平距離が４ｍ又は８ｍだけ外側の線上に配置するのではないこと。
と記されています。
令第１３５条の４第１項第１号は、「北側の前面道路の反対側に水路、線路敷その他これらに類するものがある場合・・・」と始めており、北側高さ制限の、道路の反対側の境界線が、さらにそれらの１／２だけ外側になる、というもので、上記�△蓮△海竜�定を適用しない、とするものです。
「前面道路の反対側の境界線」＝「隣地境界線」なので、「北側の前面道路の反対側に水路などがある場合は、水路などを考慮しないで配置する。（道路は既に考慮されている。）」となり、前面道路の反対側の境界線上に天空率の算定位置を均等に配置することに何ら問題はないと思われます。
Q.E.D.
