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| 不動産鑑定：６月号 |
「住宅新報社発行「不動産鑑定」６月号より転載」 |
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建築形態規制ソフト活用のポイント
第１回 建築形態規制ソフトの必要性 |
| 財団法人 日本不動産研究所 ＣＡＤ活用プロジェクトチーム 岩指 良和 |
はじめに
近年の不動産市場においては、価格の形成要因が取引事例比較法による比準価格重視から収益還元法による収益価格重視へと移行しています。そのため、鑑定業界では収益価格の精度向上にむけた様々な動きがあります（ex.不動産証券化に伴うＤＣＦ法の適用など）。
収益還元法での更地の収益価格を求める土地残余法、また規模の大きな土地に適用される開発法等では、建物の想定が必要になります。
この想定作業は、様々な建築形態規制に対する正確な法知識と建物設計に関する知識が必要であり、なかなか簡単にはできません。なにせ一級建築士などの資格があるくらいです。
簡単な作業ではありませんが、この想定建物の精度は非常に重要です。なぜなら、実際に建築することができない建物に基づく収益価格は無意味であり、市場性を有しない建物は無価値だからです。仮に想定建物の精度が低い場合は、得られた収益価格も信頼できず、当然鑑定評価額も信頼できないことになります。もちろん依頼者から「土地残余法で想定している建物ボリュームでは実際には建築できなかった。」などと言われては信用を失ってしまうという問題もあります。
「設計の専門家ではない不動産鑑定士等が、どうすれば建築形態規制を考慮した建物を効率的に想定し、その精度を高めることができるか？」この問題に対する当プロジェクトチームの検討結果を今後数回に分けて紹介していきます。
１.建物想定方法と鑑定評価上の留意点
次の条件の土地に対して建物を想定する場合、想定方法によって鑑定評価上どのような危険がかくれているのかみてみましょう。 なお、前提条件として、賃貸用の共同住宅を想定することとします。 |
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面積：900�屐∪槎牝始�：南側６ｍ公道、間口×奥行：３２ｍ×２８ｍ、
形状：長方形公法上の規制：第２種住居地域、指定建ぺい率６０％、指定容積率２００％、日影規制4h/2.5h/4m
周辺の利用状況：５〜６階建て程度の共同住宅を中心に戸建住宅等も散見する住宅地域。 |
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I☆方法１
周辺の利用状況から判断し、５階建て程度は建築可能として、指定容積率を全て消化し、１〜５階までが同一面積の５階建て共同住宅を想定。各階の有効面積は、類似規模の賃貸共同住宅から求められる標準的な賃貸有効率を利用して査定する。
簡便ではありますが、非常に危険な方法です。建物が何階まで建つかはそれぞれの敷地の面積・形状・接面状況などの個性に応じて異なります。特に日影規制のある地域（対象地に日影規制がなくても背後の地域にある場合もあります）においては、日影図によるチェックをしないと建築可能な建物の高さや形状の判断は非常に困難です。ただし、標準的な賃貸有効率を利用する考え方は、想定する建物の形状・規模が標準的なものであるときには有効になります。
☆方法２
各種建築形態規制をクリアする建物図面を手書きで作成する。建物の概略だけでなく各階の専有室・廊下等についても配置した各階平面図も作成する。賃貸有効面積についても図面をもとに査定する。
適正に建物計画を行うことができるのであれば鑑定評価上何の問題もありませんが、手書きではやり直しが発生すれば非常に時間がかかりますし、斜線制限や日影規制についても手計算で行うことになり、やはり膨大な手間と時間がかかることを考えれば現実的な方法ではありません。
☆方法３
建築形態規制ソフト（以下、ＣＡＤ※１ソフトという）を利用し、逆日影計算などを行い敷地上で建築可能な空間を把握（図１）。建物の外観を設定し、等時間日影によるチェック作業を繰り返すことにより想定建物の外観を決定する。各階の賃貸有効面積については、手書きもしくはＣＡＤソフトを利用して各階平面図を作成して査定する。
方法２の一連の作業についてＣＡＤソフトを利用して作成する方法です。 ＣＡＤソフトの使い方をマスターする必要はありますが、建物の想定を最も効率よく行えます。
具体的には、図１の「a.鳥瞰図」では、全体のボリュームイメージをつかみ、「b.等高線図と「c.断面図」では、何階までが部屋になるのかの見当をつけ、「e.ブロック図」では、立体となった建物のイメージをつかむことができ、建物の想定を非常に効率的に行えます。
ＣＡＤソフトが利用できれば敷地形状の入力から部屋の配置までの作業を随時チェックしながら行うことができますので、非常に精度の高い建物の想定が可能になり、鑑定評価上も全く問題はありません。
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| ◆図１：建築可能空間を把握するための各種図面 |
ａ：鳥瞰図 |
ｂ：等高線図 |
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ｃ：断面図 |
ｄ：ブロック図 |
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