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不動産鑑定８月号

「住宅新報社発行「不動産鑑定」８月号より転載」

２．ＣＡＤによる共同住宅プランニングの基本的な流れ

斜線・日影のチェックが必要と判断された場合、まず等高線図等によるボリュームチェックを行います。この段階で容積率を十分に消化できることが明確な場合もありますが、共同住宅については多くの場合、前記の理由等により次のステップである建物プランの作成を行う必要があります。以下、ＣＡＤによる共同住宅プランニングの基本的な流れについて説明していきます。

Step1：敷地の南側に南向き住戸の配置を検討する
共同住宅を計画するに当たっては、まず敷地の南側に南向きに開口部を持つ住戸を配置することを考えます（図１参照）。これは南向き住戸が一般的に一番人気があり、高い金額で分譲または賃貸することができるからです。もちろん敷地の形状・接面道路との関係などにより、どうしても南向き住戸を配置することが合理的でない場合もあります（図２参照）。しかし、原則としては南向きの住戸の配置を検討します。



図１：	基本の南向き住戸配置の例	図２：	南北に狭く南向きは位置は隣地斜線のため不可能な例

Step2：開口部が面する境界線（隣地境界線・道路境界線）の種類に応じて住戸を配置する位置を決定する
住戸を配置するにしても境界線にべったりというわけにはいきません。建築基準法や条例等により様々な規制がありますし、商品価値を高める意味でも通風・日照等の居住環境を整備するために開口部が面する境界線の種類に応じて以下の点に注意する必要があります。

Step2-1：開口部が隣地境界線に面する場合　⇒　採光斜線により決定される
建築基準法により住宅の居室には一定の採光が必要と規定されていることから、各住戸の開口部を採光上有効な空間に面するようにしなければなりません。この採光上有効な空間は用途地域ごとに建物の高さとの関連で決まります。具体的には、住戸の開口部から隣地境界まで一定の距離を空けることが要求され、この距離と建物の高さから求められる傾斜を“採光斜線”と呼びます。この採光についての規定は最近改正され※１多少複雑になりましたが、TP-PLANNERを利用することで様々な条件（想定建物の階数・階高をいろいろな組み合わせに変更すること）による採光斜線に基づく空間距離を下図のように瞬時に求めることができます※２（図３・４参照）。



図３：	想定建物の階高等の条件入力画面	図４：	採光斜線による斜線チェック図

※１建築基準法施行令の一部を改定する政令第210号平成12年4月26日公布、平成12年6月1日施行。
※２ TP-PLANNER独自の計算機能で処理されます（改正法規対応済）

Step2-2：開口部が道路境界線に面する場合　⇒　道路斜線により決定される
採光上の空間についての規制は開口部が道路に面していると話が少し違います。この場合、採光上必要な空間は全て道路が肩代わりしてくれることから、建物の形態は道路斜線により制限されます。
ただし、道路斜線については建物を道路境界からセットバックすることにより緩和されるため、建物を計画する場合にどこまでセットバックするのか決めないことには道路斜線を求めることができません。そこで、以下の方法で建物をどこまでセットバックするか求めます。
①まず敷地一杯に建物を建築した場合の限界ライン（等高線図）を参考に建物を何階まで想定するかを決定します。②次に、一番上の階層における限界ラインと道路境界とのちょうど真ん中のラインを求めます。③建物セットバックによる道路斜線制限の緩和により、この真ん中のラインまで建物を建築することができます。
図５では道路斜線に引っかかった建物が、セットバックした図６では道路斜線の緩和によりクリアしています。



図５：	敷地境界線ぎりぎりで想定した建物	図６：	セットバックして想定した建物

Step3：敷地の東側・西側にも住戸の配置を検討する＝東向き・西向き住戸の配置を検討する
南向き住戸の配置のみで容積率を消化できれば作業は終了です。しかし、共同住宅の場合には事務所のように敷地一杯に建物を配置できないために、東向きや西向き住戸も配置して建物をＬ字形やコの字形にする必要があります。開口部と境界線との関係についてはStep2と全く同じになります。

３．次回のテーマ

以上のように建物の配置は敷地形状、道路付、法規によりある程度決まります。建物の配置が決まれば手順としては、続いて具体的な建物形状のプランニングとなりますが、建物形状は敷地形状、法規の関連で様々であり、共同住宅の基礎知識を念頭に行わないと非現実的な建物となるおそれがあります。
　そこで、次回は共同住宅の建物形状についての基礎知識を考慮した建物プランニングについて説明を行いたいと思います。

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