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不動産鑑定１1月号		「住宅新報社発行「不動産鑑定」11月号より転載」
建築形態規制ソフト活用のポイント第6回傾斜地におけるＣＡＤ（建築形態規制）ソフトの利用方法①
財団法人　日本不動産研究所ＣＡＤ活用プロジェクトチーム　平　倫明コミュニケーションシステム　比嘉昇秀

はじめに

前回までに建築形態規制を考慮した最有効使用の建物の想定方法を共同住宅、オフィスに分けて説明してきました。今回は、傾斜地において建物を想定する場合に留意すべきポイントを具体的に説明します。
横浜や神戸に代表される傾斜地の多いところにおいては、傾斜地であるが故のチェック項目が多いために、平坦地に比べ建物想定作業が複雑になってしまいます。
しかし、傾斜地にたてられた共同住宅の場合、山なみを背にして自然と一体となった外観、そして前面に視界に広がった見晴らしの良さなど、傾斜地に建つことでハイグレードなマンションとして分譲されている事例も数多く見られます。

１．傾斜地における地盤面の考え方

傾斜地において留意すべきポイントは、第１に日影規制における地盤面（平均地盤面）の捉え方、第２に斜線規制における地盤面の捉え方が最も重要な事項となります。こうした内容を正確に把握しないと、建築形態規制のチェックにより建築可能なボリュームを把握する時点で大きな間違いを起こすことになり、その結果、想定した建物により試算される収益価格等は誤った価格を査定してしまうこととなります

（１）「地盤面」とは
「地盤面」とは、敷地そのものの地盤面をいうのではなく、あくまで「建築物が周囲の地面と接する位置」によるもので、この平均の高さにおける水平面が建築基準法でいう「地盤面」であることを再認識する必要があります。

（２）日影規制における地盤面（平均地盤面）
中高層建築物の日影規制は、「平均地盤面」から４ｍあるいは１.５ｍの高さにおける測定面の日影時間で規制されます。建築基準法では、この日影規制で基準となる地盤面を「平均地盤面」と称し、「当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面」と定義しています。平均地盤面は図１の要領で算出され、１つの敷地に対して１面ずつ設定することとなります。

◆図１：日影規制における平均地盤面

	図1－①	図1－②

（３）斜線規制における地盤面建築形態規制における建物の高さは、「地盤面」からの高さで定義されます。この「地盤面」とは、前述したように「建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面」で、さらに「その接する位置の高低差が３ｍをこえる場合においては、その高低差３ｍ以内ごとの平均の高さにおける水平面」となります。したがって、建物が周囲の土地と接する範囲の高低差が３ｍを超える場合、１つの敷地でも地盤面は複数存在し、各地盤面の位置における道路斜線、隣地斜線などの高さのチェックも各々の地盤面を対象として行われます（この部分が最も複雑になる原因です）。平坦地であればどの地盤面も一致しますので問題はなかったわけですが、傾斜地のような高低差がある敷地の場合は、敷地そのものの地盤面と、日影規制、斜線規制において基準となる地盤面が変わってきますので、注意が必要となるわけです。したがって、傾斜地の場合は、建物の想定の前提となる敷地の情報については公法上の規制を把握するほかに、こうした敷地の高低差を正確に把握することも重要な項目となってきます。		◆図２：斜線規制における地盤面（地盤面が3面存在するときの高度斜線チェック図）