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不動産鑑定１２月号		「住宅新報社発行「不動産鑑定」12月号より転載」
建築形態規制ソフト活用のポイント第7回傾斜地におけるＣＡＤ（建築形態規制）ソフトの利用方法②
財団法人　日本不動産研究所ＣＡＤ活用プロジェクトチーム　平　倫明コミュニケーションシステム　比嘉昇秀

はじめに

前回は、傾斜地において建物を想定する場合に留意すべきポイントを説明しました。そこで今回はTP-PLANNERを使用して、傾斜地に共同住宅を想定する一連の流れを前回の留意点に重点を置きながら説明します。

１．対象地の高低差等の把握（＝対象地の情報入力）

第２回（７月号）で説明したように、まず評価対象となる土地の様々な情報を把握しなければなりません。
対象地の形状、緯度・経度、方位といった敷地形状等の把握、用途地域、建ぺい率・容積率、日影規制の条件といった公法上の規制の把握が建物想定上の大きな手順です。傾斜地の場合も建物を想定する手順自体は平坦地と同様です。
しかし、傾斜地の場合は対象地そのものの高低差（傾斜情報）、隣接地との高低差、接面道路との高低差も把握する必要があり、平坦地に比べて把握すべき情報が多くなります。

POINT：対象地の高低差、隣接地，道路との高低差の正確な把握が必要

（１）対象地の高低差（傾斜情報）の設定

TP-PLANNERでは、対象地の等高線図をもとに傾斜地盤を作成します（図１）。この方法が一番正確ですが、評価の対象となる土地のすべてにこうした敷地内の高低差もわかる情報が得られるとは限りません。
その場合は、最低限、敷地外周の高さから高低差を把握し、傾斜地盤を作成することになります。しかし、敷地内の高低差を無視してしまうために正確な結果は得られません。
また、どうしても入手または把握することが困難な場合は想定条件を設定することになりますが、その場合には何を前提に建物を想定したのかが問われますから十分に注意してください。
したがって、傾斜地の鑑定依頼を受ける際には、こうした高低差の情報がどこまで入手可能かをしっかり確認することが必要です。

（２）対象地と隣接地、道路との高低差の設定

傾斜地では、ほとんどの場合において、対象地の地盤面（平均地盤面）と隣接地及び道路との間に高低差を生じます。
これらの高低差については、前回説明したように斜線制限や日影規制において緩和規定がありますので、これらをしっかり把握していないと正確な建物ボリュームを求めることができなくなります。
したがって、対象地自体の高低差だけでなく、隣接地や道路との高低差についても把握しておかなければなりません。
TP-PLANNERでは、隣接地の地盤面高、道路面高を設定しておけば、対象地の想定建物から求められる地盤面（平均地盤面）との高低差は自動計算され、緩和がある場合は、これを考慮した結果を示します。

◆図１：等高線図を用いて作成した傾斜地盤（右図は立体図）

２．仮想建物領域設定による建築可能空間の把握　　（＝ボリュームチェック）ここまでの入力設定を経て、次は斜線制限、日影規制の各種計算により建築可能空間の把握（ボリュームチェック）を行います。ただし、これらの規制の基準となるのは地盤面（平均地盤面）ですから、傾斜地の場合、まずこの斜線制限に係る地盤面、日影規制に係る平均地盤面をそれぞれ決めなければなりません。この地盤面（平均地盤面）は、建物があることによって求められますが、建物を想定していない状況でどのように求めるのでしょうか。 POINT：仮想の建物領域の設定により、仮の地盤面（平均地盤面）を計算し、おおまかな建築可能空間を把握（１）仮想建物領域設定による地盤面（平均地盤面）の想定建築可能空間を把握（ボリュームチェック）するために、便宜上、建物を配置する領域（以下「仮想建物領域」という）を最初に設定します（図２）。さらにこの領域に建物を想定する場合に建物と敷地が接する最下点の地盤の高さ（以下「建物の基準地盤高」という）を設定することで、各種規制の仮の地盤面（平均地盤面）を計算します（図３）。仮想建物領域の設定に際しては、建物配置を考える場合と同様に、敷地形状、方位、接面道路の位置、隣接地の状況等を考慮するとともに、特に対象地の傾斜（高低差）の程度を考えて設定する必要があります。基本としては傾斜のゆるい比較的広く面積がとれる部分で、効率的な建物配置ができるかを考えながら領域を設定します。		図２：仮想建物の設定 A・B・Cの３つの仮想建物領域を設定
		図３：平均地盤の計算

（２）仮想の地盤面（平均地盤面）による建築可能空間の把握仮定した地盤面（平均地盤面）により、「逆斜線計算」「逆日影計算」を行って、建築可能空間の把握（ボリュームチェック）を行います（図４）。あくまで仮に設定した地盤面（平均地盤面）によるチェックですので、ここで把握される建築可能空間は平坦地の場合と比べ、よりおおまかな把握となります。この段階で容積が効率的に充足されないと判断できる場合は、建物領域、建物の基準地盤高を変更して再計算することにより、効率的に容積が充足される領域や位置を再検討する必要がありますが、いずれにせよおおまかな建築可能空間において、建物を想定しながら、各種規制の地盤面（平均地盤面）を再計算し、建築可能空間の精度を高めていくことになります。 TP-PLANNER を活用することで、傾斜地における煩雑な計算は、対象地の各種情報がしっかり設定されていれば自動計算してくれますので、効率的な作業ができます。しかし、このように常にフィードバックさせながら想定建物を確定していくという作業が必要になります。
図４：仮想の地盤面（平均地盤面）による建築可能空間の把握

	建物等高線図	断面図