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不動産鑑定９月号

「住宅新報社発行「不動産鑑定」９月号より転載」

２．住戸形式
　
建物の形式はとりあえず片廊下・フラット型で検討してみることにして、次に問題となるのは１住戸当たりどういった規模・間取りの住戸を想定するのかという点です。もちろん「７５㎡程度の３ＬＤＫ」という程度の想定は市場性の分析において行いますが、そのように分析・検討した間取りが対象地において配置可能かどうかは別問題です。
そもそも、共同住宅の住戸は寝室・居間、食事室・台所、浴室・便所、バルコニー、収納部分、玄関等の各部屋の構成により間口・奥行の関係が決まります。各構成要素の機能は、基本的に戸建住宅と変わりはありませんが、より限られた規模の平面計画が要求されるのです。また、ワンルームかファミリータイプかにもよりその関係は変わってきますが、その構成や寸法を把握しておくことは、建築の専門家でない不動産鑑定士にとって困難です。

ポイント：住戸の形式はタイプごとに現実的な間口と奥行を把握する

　鑑定評価における建物想定では、内部の間取りについてこだわるよりも“一部屋当たりの現実的な間口と奥行”を押さえておくことが大切です。仮に１戸当たりの住戸を間口７ｍ・奥行２０ｍとして建築すれば容積率が消化できるとしても、奥行２０ｍの住戸は居室の採光確保や通風などから考えて現実的ではないので、そのような建物想定は的確とはいえません。
　ワンルームや３ＬＤＫなどの住戸タイプごとに、それぞれごく一般的な間口と奥行の長さを把握しておけば、鑑定評価における建物想定では十分です。
一般的な共同住宅の間口と奥行は、実際の建物を数多く見るほか、広告、住宅情報等を普段から見ることで把握できます。この段階においてもＣＡＤはそれらの情報をデータとして保存しておくことができ、別の建物想定においてもそれらを使用できます。

◆図２：住戸サンプル

３．共用部分
　
住戸の配置が終われば、当然それぞれの住戸を横につなぐ廊下と縦につなぐ階段・エレベーターなどの共用部分を配置する必要があります。共同住宅は、一般に入口・ポーチから各住戸に達するまでに、廊下・階段・エレベーターを共用します。入口・ポーチから各住戸への距離は位置別効用比に影響を及ぼしますので、できるだけ各住戸からアクセスがしやすい位置が望ましいです。また、廊下・階段・エレベーターの配置によって建物の有効率は変動します。できるだけ有効率が高くなるように配置する必要があります。

特にエレベーターについては、平成９年６月１３日公布の都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律によっても容積率不算入の措置がとられなかったことから、どのようなエレベーターを何カ所設置するかは建物の有効率に大きく影響し、当該不動産の収益性に直結します。なお、エレベーターについて塔屋（ペントハウス）が以前は必要でしたが、現在は各エレベーターメーカーからペントハウスレスのエレベーターが各種販売されており、屋上に塔屋を考える必要がなくなったことから建物想定の自由度が高まっています。
　廊下・階段については容積率不算入とされますが、日影規制の対象にはなりますし、建築コストに影響を与えるものですから無計画に配置するわけにもいきません。廊下はあまり悩むこともなく配置できると思いますが、階段は１カ所ですむのか２カ所いるのか悩むところです。なぜなら、避難規定として「２以上の直通階段の設置」※１が規定されているのですが、その内容が「その階の居室※２の面積＞２００㎡」とされていることから住戸内部の間取りが確定していない段階では居室の面積の判断ができないためです。
　しかし、この点については住戸の規模に応じて居室面積を簡易に概算すれば良いと思います（表２参照）。分譲マンションのパンフレット等を眺めていただければ概ねの割合が判断できます。階段の数を判断するに当たってはこの程度の概算で特に問題は生じることはないでしょう。

◆表２：居室面積概算式　

１住戸当たり面積	居室面積概算式
７０㎡前後	各階住戸面積×２／３
８５㎡前後	各階住戸面積×３／４
１００㎡前後	各階住戸面積×４／５